先代の代からのFAX・POSレジ、実はISDN回線かもしれない。2028年終了に向けて今すぐ確認すること
事務所の隅にあるFAX複合機、レジ横の決済端末、倉庫の警備システム。先代の代からずっと同じ場所で動いていて、故障もせず、誰も意識してこなかった機器たち。もしその配線の裏側が「ISDN(INSネット)」という電話回線だったら、あなたの会社は2028年12月末までに何らかの対応を迫られることになります。
結論から言います。ISDN(INSネット)は新規申込こそ2024年8月末で終わっていますが、今使っている回線がすぐ止まるわけではありません。ただし2028年12月31日には全サービスが終了することがすでに確定しており、それまでに①自社のどの機器がISDN回線を使っているかを洗い出し、②代替手段(光回線・ひかり電話など)へ切り替える、という2段階の対応が必要になります。この記事では、非IT出身の承継社長でも自分で確認できる手順と、業者に相談する際に聞くべきことを整理します。
こんな状態の人に向けて書いています
- 先代の代からFAXやレジ、警備システムが「昔からある配線」で動いていて、何の回線か把握していない
- 「ISDN」「INSネット」という言葉を聞いたことはあるが、自社への影響がわからない
- 電話まわりの契約書・請求書を見たことがなく、誰が契約者かも曖昧
- 取引先やベンダーから「回線の切り替えは大丈夫ですか」と聞かれて答えられなかった
- 2025〜2028年という期限がどれくらい急ぐべき話なのか判断がつかない
一つでも当てはまるなら、この記事はあなたのための内容です。
そもそも「ISDN(INSネット)」とは何か
ISDN(INSネット)は、NTTが提供してきた電話回線を使ったデジタル通信サービスの名称です。1990年代から2000年代にかけて、企業の電話・FAX・データ通信を1本の回線でまとめて扱える仕組みとして広く普及しました。先代が会社を経営していた時代、電話回線を引く選択肢としてISDNはごく一般的なものであり、今のように「光回線かモバイル回線か」を選ぶような感覚ではなく、電話局から標準的に案内される回線がISDNだった時期が長く続きました。
そのため、今の時点で「うちはインターネットも光回線を使っているし、関係ないはず」と思っていても、FAXやレジ、警備システムなど一部の機器だけが、電話回線時代の名残としてISDN配線のまま使われているケースが少なくありません。
いつまでに何が起きるのか——確定しているスケジュール
まず押さえておくべきは、ISDN(INSネット)終了のスケジュールがすでに確定しているという事実です。
| 時期 | 出来事 | 承継社長への影響 |
|---|---|---|
| 2024年1月〜 | 「ディジタル通信モード」が順次終了しIP網へ移行 | データ通信用途の一部がすでに影響を受けている可能性 |
| 2024年8月31日 | ISDN(INSネット)の新規申込受付終了 | 新規契約はもうできない |
| 〜2028年12月31日 | 通話モード・FAX等は引き続き利用可能 | 「今すぐ止まる」わけではないが猶予期間中 |
| 2028年12月31日 | ISDN(INSネット)サービス全体が終了 | この日までに全ての利用機器の移行が必須 |
NTT東日本の案内によれば、2024年1月以降も「通話モード」は引き続き利用でき、電話やG3規格のFAXは当面使用可能ですが、2028年12月31日をもってISDN回線のサービス自体が完全に終了します(出典: NTT東日本「ISDN(INSネット)とは?2028年12月終了の影響と企業が取るべき対応」)。「まだ先の話」に見えるかもしれませんが、後述するとおり自社の機器を洗い出し、代替手段を選定し、切り替え工事を手配するまでには半年から1年単位の時間がかかることも珍しくありません。2026年の今の時点で、逆算した準備を始めるべき段階に入っています。
承継社長が特に見落としやすい「FAX以外」の利用先
ISDNと聞くと「うちのFAXの話か」で終わらせてしまいがちですが、承継した会社で見落とされやすいのはFAX以外の利用先です。NTT東日本の案内では、ISDN終了にともないシステム刷新が必要になる可能性がある例として小売業のPOSシステムやEDI(電子データ交換)システムが挙げられているほか、銀行業務や警備システムのように高い情報セキュリティ対策が求められる企業間データ通信については、光回線への切り替えとあわせて「閉域ネットワーク」の利用が案内されています(出典: 同上)。先代の代に導入されたまま、社長自身も存在を意識していない機器がこの中に含まれていないか、次の節の手順で確認してください。
- 店舗・工場のレジ(POSシステム): 古いレジの中には、決済情報やジャーナルデータの送信に電話回線を使うタイプがあります
- 取引先との受発注(EDI): 先代の代から続く取引先との間で、専用線的にISDN回線でデータをやり取りしている場合があります
- 警備会社のセンサー・通報装置: 高いセキュリティが求められる企業間データ通信の一例として案内されており、異常時の自動通報が電話回線経由で組まれている場合は特に確認が必要です
- FAX複合機・単体FAX: 最も一般的な用途ですが、複合機の場合はコピー機能などと配線がまとめられていて気づきにくいことがあります
これらは日々の業務では「動いていて当たり前」の存在であり、先代からの引き継ぎ資料に「回線」についての記載がほとんど残っていないケースが大半です。取引先からの受発注や警備の通信が突然使えなくなる事態は、FAXが止まるよりも経営への影響が大きいことがあるため、FAX以外の利用先こそ優先して確認する価値があります。
自社の回線を確認する3つの方法
社長自身がIT専門でなくても、以下の3つの方法で確認を進められます。
- 電話まわりの請求書・契約書を確認する: 「INSネット」「INS通信料」「ISDN」といった記載がないか確認します。経理担当や先代の書類保管場所に残っている可能性が高い書類です
- 電話機まわりの配線・機器を確認する: 電話機やFAX、レジ、警備パネルの配線をたどり、見慣れない小型の機器(回線を変換・分岐させる装置)が電話線の途中に接続されていないか目視で確認します。自己判断が難しい場合は、次の問い合わせ先に写真を見せながら相談すると確実です
- NTT東日本・西日本、または契約している通信事業者に直接問い合わせる: 契約者名・電話番号を伝えれば、その回線がISDNかどうかを確認してもらえます。契約者が先代の個人名義のままになっている場合は、この機会に法人名義への変更も併せて相談するとよいでしょう
これらの確認を、電話・FAX・レジ・警備システムそれぞれの配線について1つずつ行います。1台ごとに確認結果を一覧にしておくと、後述する切り替えの計画を立てるときに役立ちます。
確認できたら、次に何をするか
自社の機器がISDN回線を使っていると分かった場合、選択肢は大きく2つです。
- 光回線への切り替え: 光回線を引き、ひかり電話サービスなどを利用してFAXや電話機能を維持する方法です。NTT東日本の案内では、ひかり電話オフィスAという法人向けサービスが代替手段の一つとして挙げられています(出典: 同上)
- 機器そのものの入れ替え: POSレジや警備システムのように、回線だけでなく機器自体が古いために更新のタイミングと重なる場合は、回線と機器を同時に見直す方が結果的に効率的なことがあります
どちらを選ぶにしても、契約している通信事業者、レジベンダー、警備会社それぞれに個別の相談が必要になります。先代の代からの付き合いのベンダーがいる場合は、まず「うちの設備でISDNを使っているものはありますか。2028年の終了に向けてどう対応すればいいですか」と具体的に尋ねてみてください。回答が曖昧だったり、期限を把握していなかったりする場合は、他の業者にもセカンドオピニオンとして確認することをおすすめします。
「様子見」が承継社長にとって危険な理由
「まだ2028年だから」「今のところ困っていないから」と後回しにしたくなる気持ちは理解できます。しかし承継社長という立場だからこそ、様子見のリスクは先代が経営していたときよりも大きくなります。理由は3つあります。
第一に、先代が契約した当時の担当者や工事業者との関係が、承継後は薄れていることが多いという点です。先代の代であれば「昔からの付き合いの業者にひとこと聞けばわかる」という状況だったかもしれませんが、承継後は誰が窓口かも分からず、確認そのものに時間がかかります。期限が近づいてから動き出すと、確認だけで数か月を要することも珍しくありません。
第二に、切り替え工事には他社との調整が挟まる場合があるという点です。特にPOSレジやEDIのように取引先とデータをやり取りする仕組みは、自社だけの都合で切り替え日を決められません。取引先のシステム部門やベンダーとの調整に時間がかかることを見込んで、早めに動き出す必要があります。
第三に、承継直後は「先代の時代の設備を刷新した社長」という印象を社内外に残す機会でもあるという点です。回線の切り替えは地味な作業に見えますが、古参社員や取引先から見れば「この社長は会社の基盤をきちんと管理している」という信頼につながる小さな実績になります。逆に期限ギリギリになって慌てて対応すると、「先代の時代からの宿題を放置していた」という印象を与えかねません。
承継社長が今週やるべき3つのアクション
ここまでの内容を踏まえ、今週中にできる範囲の具体的なアクションを3つに絞って示します。
- 経理担当者や総務担当者に、電話・通信関係の請求書を一式集めてもらう: NTTからの請求書、レジベンダーからの請求書、警備会社からの請求書を横に並べ、「INS」「ISDN」の文字がないか確認します
- 事務所・店舗・工場を一周し、電話線がつながっている機器を洗い出す: FAX、レジ、警備センサー、その他「昔からそこにある」通信機器をリストアップします。配線の途中に見慣れない小型の機器がないかも合わせて確認します
- 契約している通信事業者・レジベンダー・警備会社のいずれか1社に、電話またはメールで問い合わせる: 「自社の設備でISDN(INSネット)を使っているものがあるか」「2028年の終了に向けてどう対応すればよいか」を尋ね、回答を記録しておきます
この3つだけであれば、専門知識がなくても、承継したばかりの社長自身が1週間以内に着手できます。全ての機器の洗い出しと切り替えを1週間で終わらせる必要はありません。まずは「自社に該当する機器があるかどうか」を把握することが最初のゴールです。
取引先のEDI・受発注がISDN経由だった場合の進め方
先代の代からの取引先と受発注データをやり取りしている場合、ISDN回線が自社だけでなく取引先の設備にも関わっていることがあります。この場合、自社の判断だけで切り替え時期を決められない点に注意が必要です。
まず自社側の担当者(経理・総務・製造管理など、実際にデータをやり取りしている部署)に、取引先とのデータ連携がどの回線・どの仕組みで行われているかを確認してもらいます。専用線的な仕組みで続いている古い取引ほど、担当者の異動や退職によって経緯が分からなくなっていることが多いため、可能であれば先代の代から取引を担当している社員や、取引先側の窓口に直接確認するのが確実です。
次に、取引先に対して「弊社の受発注に使っている回線について、2028年のISDN終了に向けて確認したい」という趣旨で早めに連絡を入れます。取引先も同じタイミングで対応を検討している可能性が高く、先方から「実はこちらも切り替えを検討している」という返答が来ることも少なくありません。承継後に取引先と改めて接点を持つきっかけとしても、この確認作業は活用できます。
切り替えの検討にあたっては、以下の点を取引先とすり合わせておくと後の手戻りを防げます。
- 現在のデータ連携方式(ファイル形式、送受信のタイミング、担当窓口)
- 切り替え後も同じ形式でデータをやり取りできるか、変更が必要か
- 切り替え作業のスケジュール(自社と取引先、どちらが先に動くか)
- 切り替え期間中、一時的に旧来の方法(FAXや手作業)に戻す必要があるか
これらは自社だけで完結する話ではないため、社長自身が主導して早めに声をかけることが、承継直後の関係構築という意味でも有効です。
契約書・見積もりを確認する際のチェックポイント
通信事業者やベンダーから切り替えの提案・見積もりを受け取った際、非IT出身の社長でも確認できるポイントを整理します。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 初期費用 | 工事費・機器購入費が明記されているか。既存機器の下取り・再利用の可否 |
| 月額費用 | 現在の回線料金と比較して増減がどの程度か。契約期間の縛りの有無 |
| 切り替え期間 | 申込から工事完了までの想定期間。繁忙期を避けたスケジュールになっているか |
| 業務停止の有無 | 切り替え工事の当日、電話・FAX・レジ等が一時的に使えなくなる時間帯があるか |
| サポート体制 | 切り替え後にトラブルが起きた場合の連絡先・対応時間 |
これらの項目について、提案してきた業者の説明が曖昧だったり、質問に対して具体的な数字で答えられなかったりする場合は、他の業者にも相見積もりを取ることをおすすめします。先代の代からの付き合いのベンダーであっても、この機会に説明の分かりやすさや対応の丁寧さを見極める材料にしてよいでしょう。
先代のシステム全体の棚卸しと合わせて進める
ISDN回線の確認は、単体で終わらせるよりも、先代から引き継いだ社内システム・機器全体の棚卸しと合わせて行うと効率的です。すでにシステム管理台帳の作成に着手している場合は、回線の種類も記録項目に加えることをおすすめします。管理台帳の作り方は別記事で具体的に解説していますので、あわせて参照してください。
よくある質問
今すぐFAXが使えなくなるのでしょうか?
いいえ、2028年12月31日までは通話モードやFAX機能は引き続き利用できます。ただし新規申込はすでに終了しており、切り替えの相談や工事には時間がかかるため、「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、早めに自社の利用状況を確認することが重要です。
費用はどのくらいかかりますか?
回線の切り替え費用は機器の台数や契約内容によって幅があり、一概には言えません。NTT東日本が案内する法人向けの代替サービスの一つには月額1,210円(税込)からという案内もありますが、実際の総額は既存機器との互換性や工事内容によって変わるため、契約している通信事業者に自社の状況を伝えたうえで見積もりを取ることをおすすめします。
先代の代からの契約なので、誰が契約者か分かりません。どうすればいいですか?
通信事業者に問い合わせる際、契約者名・電話番号・設置場所の情報があれば契約内容を確認してもらえることが一般的です。契約者が先代の個人名義や退職した担当者の名義になっている場合は、法人名義への変更も合わせて相談してください。
警備システムの通報回線がISDNだったら、契約している警備会社に直接聞けばいいですか?
はい、警備システムの通報経路については、まず契約している警備会社に確認するのが確実です。警備会社側で回線の種類を把握し、必要な切り替え作業を案内してくれます。自己判断で機器周りを触る前に、必ず警備会社に問い合わせてください。
複数の拠点(本社・工場・店舗)がある場合、どこから確認すればいいですか?
取引先との受発注や警備システムなど、止まったときの業務影響が大きい拠点から優先して確認することをおすすめします。特に工場のEDIや店舗のPOSレジは、止まると売上や生産に直結するため、まずそこから着手し、次に本社のFAXや電話といった順で進めると無理がありません。全拠点を同時に調べようとせず、影響の大きい順に1拠点ずつ確認していく方が、承継直後で人手が限られる状況でも現実的です。
すでに光回線でインターネットを使っています。それでも確認は必要ですか?
必要です。インターネット回線が光回線であっても、FAXやレジ、警備システムの配線だけが電話回線時代のまま別系統で残っているケースは少なくありません。「インターネットは光だから大丈夫」という思い込みで確認を省略せず、機器ごとに配線をたどって確認することをおすすめします。
