決算月は、システムに触っていい時期と悪い時期を分ける境界線
承継して最初の1年、社長は日々の業務をこなしながら「システムのどこに爆弾が眠っているか分からない」という不安を抱えています。退職者アカウントの棚卸し、動かないシステムの調査、古参社員へのヒアリング——やるべきことは山積みで、つい「気づいたところから手をつける」というやり方になりがちです。
しかし、会計・請求まわりのシステムに関しては、この「気づいたところから」が命取りになることがあります。理由は単純で、決算月をまたぐ前後は、同じ確認作業・同じ改修作業でも危険度がまったく違うからです。決算月から離れた時期であれば多少のトラブルも吸収できますが、決算をまたぐ数週間は、システムの不具合がそのまま数字のズレや申告の遅れに直結します。
この記事では、承継1年目のシステム確認を「決算月から見てどのタイミングにいるか」という軸で整理します。何を今やるべきで、何を決算が終わるまで待つべきかの分かれ目を示します。
判断の分かれ目は「決算月まで何ヶ月あるか」
1年目のシステム確認は、決算月を基準に大きく3つの時期に分けて考えると判断しやすくなります。
(A) 決算月まで3ヶ月以上ある時期
まだ余裕がある時期です。会計・請求システムについても、動作確認や軽微な設定変更、退職者アカウントの権限確認程度であれば触って問題ありません。むしろこの時期にこそ、腰を据えて調査しておくべきです。
(B) 決算月の前後1〜2ヶ月
最も危険な時期です。会計・請求・在庫評価に関わるシステムへの変更・移行・大掛かりな調査は、原則として止めるべきタイミングです。この時期にシステムを止めたり、データを壊したりすると、決算処理そのものが遅延し、税理士や監査対応にまで影響が及びます。
(C) 決算月が終わった直後
確認や整理の好機です。1年分の会計処理が締まったばかりで、データの状態が最も安定しています。台帳の整理や、次年度に向けた調査・改善の着手にはこの時期が向いています。
(A) 決算まで余裕がある時期にやるべきこと
この時期は、会計・請求システムについても腰を据えて実態を把握するチャンスです。具体的には次のようなことに取り組めます。
- 会計ソフト・請求システムのバックアップが実際に復元できるかのテスト
- 誰がどの権限でシステムにアクセスできるかの棚卸し
- 先代の代からの担当者しか触れない処理がないかの洗い出し
特に見落とされがちなのが、FAX・手書き台帳からの受発注、抜け出すための第一歩 にあるような手作業の部分です。会計システム自体は正常でも、その手前にある受発注のプロセスが属人的なままだと、決算期に「誰かが休んだら数字が締まらない」という事態を招きます。余裕のある時期に、この手前のプロセスまで含めて確認しておくと安心です。
また、誰が作ったか分からない先代由来のExcel関数の解読方法 のように、会計の元データがExcelで管理されている場合は、その中身を読み解く作業もこの時期に進めておきたいところです。決算期に入ってから「このセルの計算式、何をしているか分からない」と気づいても手遅れです。
(B) 決算前後は「触らない」を徹底する
決算月の前後1〜2ヶ月は、会計・請求まわりのシステムに関して「新しいことをしない」時期と決めてしまうのが安全です。具体的には次のようなことを避けます。
- 会計ソフト・請求システムのバージョンアップや設定変更
- 新しいツールへの切り替え・移行作業の実行(調査や見積もり取得は可)
- 「ついでに直しておこう」という軽微な改修
この時期に何かをいじりたくなる衝動が生まれるのは、決算作業の中で不便な点や不具合に気づきやすいからです。しかし、「動いているから触るな」と古参社員に言われるシステムの安全な改修手順 にもある通り、動いているものを決算期にいじるリスクは、便利になるメリットを大きく上回ります。気づいた不便さはメモしておき、着手は(C)の時期まで待つのが得策です。
どうしても対応が避けられないトラブル(システム障害など)が起きた場合は例外です。その際は最小限の応急処置にとどめ、根本対応は決算後に回すという判断が現実的です。
(C) 決算直後は整理と次への準備の好機
決算が締まった直後は、1年で最もデータが安定している時期です。この時期にこそ、次のようなことに着手します。
- 決算期に「危ないと感じた箇所」の棚卸しと記録化
- 先代のExcel台帳、システム化の判断ラインはどこか を踏まえた、請求・会計台帳のシステム化検討
- 次の決算までに直しておきたい改修の優先順位づけ
ここでのポイントは、「今回の決算で困ったこと」を忘れないうちに書き残しておくことです。1年目の決算は、その会社の会計・請求システムの実態を最も濃く体験できるタイミングでもあります。ここで得た気づきは、来年の決算前の確認リストにそのまま使えます。
まとめ:決算月を軸にカレンダーを引いておく
1年目のシステム確認は、「重要度」だけでなく「決算月からの距離」で優先度が変わります。決算まで余裕がある時期は腰を据えて調査し、決算前後は触らないことを徹底し、決算直後は整理と準備に充てる。この3段階を最初にカレンダーに書き込んでおくだけで、日々の判断に迷う場面がぐっと減ります。
会計・請求システムの詳細な調査手順や移行判断については、以下のコラムも参考にしてください。
