3ヶ月で終わらなくて当然
承継直後、多くの社長は「まず台帳を作ろう」と決意する。先代のシステムやアカウント、契約の全体像が見えないままでは経営判断ができないからだ。ところが3ヶ月経った時点で台帳を見返すと、埋まっているのは全体の3割程度、ということが珍しくない。
これは計画が甘かったからではない。日々の業務、取引先への挨拶回り、社内の人間関係の把握など、社長本人がやるべきことは他にも山ほどある。むしろ3ヶ月で台帳が完成している方が例外だと考えた方がいい。問題は「埋まらなかったこと」ではなく、「埋まらないまま次の3ヶ月をどう使うか」だ。
台帳作りの出発点については承継したらまず作る、システム管理台帳のテンプレート、そもそもどこまで作り込むべきかは承継後に見直す、システム管理台帳の作り方で扱っている。ここでは3ヶ月経過時点での「立て直し方」に絞る。
判断の分かれ目 — 何が埋まっていないか
3ヶ月時点の棚卸しでまず見るべきは、埋まった項目数ではなく「埋まっていない項目の性質」だ。大きく2パターンに分かれる。
パターンA: 情報はあるが手が回っていない 先代や古参社員に聞けば分かる、契約書を探せば出てくる、といった「作業が滞留しているだけ」のケース。この場合は焦る必要はない。残り半年のどこかで時間を確保すれば埋まる。
パターンB: 誰に聞いても分からない 先代の代からの担当者が退職していた、契約書自体が見当たらない、システムの中身を知る人が社内にいない、といった「情報そのものが失われかけている」ケース。これは時間が経つほど復元が難しくなる。
3ヶ月時点でこの2つを仕分けることが、次の3ヶ月の優先順位を決める最初の一歩になる。パターンBに該当する項目が1つでもあれば、それを最優先に回す。
パターンAへの対応 — 淡々と埋める
情報の所在が分かっているものは、残り半年の中で「毎月これだけは埋める」という小さなノルマに変えるだけでいい。無理に集中投下せず、日常業務の合間に少しずつ進める方が承継直後の体力配分としては現実的だ。
パターンBへの対応 — 消える前に押さえる
一方、情報が失われかけている項目は放置すると取り返しがつかなくなる。特に注意すべきは次の3つだ。
- 退職者が持っていたアカウントやパスワードの所在
- 先代の代からの開発会社と連絡が取れるかどうか
- ドメインやサーバーの契約名義が誰になっているか
退職者アカウントの棚卸し手順は先代の退職者PCとアカウント、承継前にやる棚卸しの手順、連絡が取れなくなった開発会社への対応は先代の代からの開発会社と連絡が取れなくなったとき、まず確認すべき3つのこと、名義の問題は前任の担当者名義のドメイン・サーバー契約を、承継後に取り戻す手順で詳しく扱っている。
これらは「今すぐ全部解決する」必要はない。だが「誰が知っているか」「どこに手がかりがあるか」だけは、記憶が薄れる前に記録しておく必要がある。担当者の記憶は半年も経てば曖昧になる。
残り半年の配分イメージ
3ヶ月時点の棚卸しを終えたら、残り半年は次のような配分で考えるとバランスが取りやすい。
前半2ヶ月は、パターンBの「消えかけている情報」の確保に集中する。誰に聞けば分かるかが分かっているうちに、聞くべき相手に聞いておく。後半4ヶ月は、パターンAの項目を通常業務と並行してコツコツ埋めていく。全項目を100%埋めることをゴールにせず、「重大なリスクにつながる部分は確保できた」状態を1年目の目標ラインに置く。
焦りすぎないための視点
台帳が完璧に埋まっていなくても、承継1年目はまだ「刷新」の段階ではない。承継直後に安心して休むために作っておく仕組みにもあるとおり、1年目の目的は最悪の事態を防ぐことであり、完璧な資料作りではない。3ヶ月経って焦りを感じたら、まずは「消えかけている情報」と「まだ残っている情報」を仕分けるところから始めればいい。それだけで、残り半年の優先順位は自然と見えてくる。
