1年目は、爆弾を探す年でもある
社長になって数ヶ月も経つと、日々の業務の合間に「このシステム、大丈夫なのか」と引っかかる瞬間が増えてきます。誰も仕様を説明できないバッチ処理、退職した人のアカウントがまだ生きているログイン画面、バックアップの実体を誰も見たことがない外付けハードディスク。こうした「爆弾」らしきものは、探そうとしなくても、日常業務の中で向こうから見つかります。
ここで多くの承継社長がつまずくのは、見つけた瞬間に「今すぐ何とかしなければ」と反応するか、逆に「今は日々の業務で手一杯だから」と丸ごと後回しにするか、両極端に振れてしまうことです。実際には、見つけた爆弾のすべてが今すぐ火を噴くわけではありません。1年目に必要なのは、爆弾を見つけるたびに一つずつ「今すぐ潰すべきか、記録して進んでいいか」を仕分ける作業です。この仕分けを怠ると、些細な不具合対応に時間を吸われて経営の他の仕事が止まるか、本当に危険な単一障害点を放置したまま日々を過ごすことになります。
分かれ目は「止まったら何が止まるか」
爆弾を見つけたときにまず自問すべきは、規模でも古さでもなく「これが実際に止まったとき、会社のどの業務が止まるか」です。この一点で、対応の優先度はほぼ決まります。
判断の材料になるのは次のような問いです。
- これが止まったら、受注・出荷・請求のどれかが即日止まるか
- 代替手段(手作業や別システムへの切り替え)が今の会社にあるか
- 同じ機能を持つ人・システムが他に一つもない状態か(単一障害点(SPOF)にあたるか)
- 直近半年以内に、実際に小さな不具合やエラーが起きているか
これらに複数「はい」がつくなら、それは記録だけして進んでいい爆弾ではありません。逆に、止まっても手作業で数日はしのげる、あるいは滅多に使われない機能であれば、今すぐ手を動かす必要性は低いと判断してかまいません。
今すぐ潰すべき爆弾への向き合い方
「止まったら即日困る」と判断した爆弾は、1年目であっても先送りしてはいけません。ただし「潰す」といっても、いきなり作り直しに着手する必要はなく、まずは応急的にリスクを下げる対応で十分です。
具体的には次の順番で動きます。
- その業務を止めずに済む代替手段を用意する(紙の手順書、別の担当者の確保など)
- バックアップが本当に復元できるかを、実際に小さく試す
- 開発会社や担当者と連絡が取れるかを確認し、取れない場合はすぐに手を打つ
この段階でやっているのは「作り直す」ことではなく「今日壊れても会社が止まらない状態を作る」ことです。単一障害点の洗い出し方は先代の代からのサーバーが壊れたら何が止まる?単一障害点の洗い出し方に手順をまとめていますので、危険な兆候を見つけたらまず参照してください。バックアップの実効性についてはバックアップ、先代の時代から取ってはいるが復元できるか試したことはあるかも合わせて確認すると、応急対応の抜け漏れが減ります。
記録だけして進んでいい爆弾への向き合い方
一方、「止まってもすぐには困らない」と判断できた爆弾は、1年目のうちに手を出す必要はありません。むしろ下手に手を出すと、まだ会社の全体像を把握しきれていない段階で、見えていない依存関係を壊してしまうリスクの方が大きくなります。
この場合にやるべきことは一つだけです。存在と危険度を「忘れないように記録する」こと。
- 何が、どこにあり、誰が管理しているか
- なぜ危険だと感じたか(サポート切れ、担当者不明、仕様不明など)
- 今後どのタイミングで見直すべきか(次の繁忙期後、来期の予算検討時など)
これを頭の中や付箋ではなく、一覧できる形に残しておくことが重要です。台帳化の具体的なやり方は属人化した先代システムを防ぐ、承継後の管理台帳の作り方と承継したらまず作る、システム管理台帳のテンプレートにまとめていますので、見つけた爆弾はその都度ここに追記していくと、2年目以降の刷新の優先順位づけにそのまま使えます。システム管理台帳として育てていくイメージです。
仕分けに迷ったときは、期限を決めて先延ばしにする
実際には「今すぐ危険とまでは言い切れないが、放置していいとも思えない」というグレーな爆弾が一番多く出てきます。この場合の正解は、無理に白黒つけることではなく、「いつまでに再判断するか」の期限だけを決めて、記録側に一旦回すことです。期限を決めずに先送りすると、そのまま忘れられてしまうのが1年目にありがちな失敗だからです。
見極めに使う判断軸を先に持っておく
爆弾を見つけるたびに一から考えていると、判断がその日の忙しさや気分に左右されてしまいます。あらかじめ「止まったら何が止まるか」「代替手段があるか」という軸を自分の中に持っておけば、突発的に見つかった問題にも慌てず仕分けられるようになります。1年目の目標は、すべての爆弾を解決することではなく、危険度を見誤らずに次の年へ引き継ぐことです。記録と対応を使い分けながら、まずは会社を止めないことを最優先に進めてください。
