いつ始めるかで、刷新の成否が変わります

刷新の中身が固まり、発注先の当たりもついてくると、多くの社長は「早く始めたい」という気持ちが先に立ちます。しかし、着手のタイミングを誤ると、内容がどれだけ良い刷新でも失敗しやすくなります。特に見落とされがちなのが、自社の繁忙期との衝突です。

繁忙期に刷新を進めると、現場は目の前の業務で手一杯になります。新しいシステムの説明を聞く余裕も、テストに付き合う余裕もありません。結果として、現場への説明が後回しになり、「聞いていない」「忙しいときに何を言い出すんだ」という反発を招きます。古参社員の協力なしに刷新を進めることの難しさは、この段階の核記事でも触れた通りですが、繁忙期はその協力が最も得にくいタイミングでもあります。

ここでは、繁忙期を避けながら刷新を進めるための、スケジュールの組み方を順番に整理します。

ステップ1: 自社の繁忙期をカレンダーに洗い出す

年間カレンダー上に繁忙期・閑散期を書き出し、そこから逆算して着手時期を決めるまでの3ステップを示すフロー図。

意外に思われるかもしれませんが、「うちの繁忙期はいつか」を即答できない社長は少なくありません。日々の業務に追われていると、忙しさが年間を通じてどう波打っているか、案外見えていないものです。まずはこれを可視化するところから始めます。

洗い出す際は、次の観点で1年分をざっと書き出してみてください。

  • 売上・受注が集中する月(決算期、季節商材の繁忙期、年度末の駆け込みなど)
  • 現場の残業・休日出勤が増える月(経理の月次・年次締め、棚卸し、繁忙期の出荷対応など)
  • 古参社員が特に手を離せない業務のタイミング(先代の代から一人で回している業務ほど、代わりが利かない時期が集中しがちです)

自社だけでなく、主要な取引先の繁忙期も意識しておくと精度が上がります。取引先の締め作業に合わせてこちらの受発注も増える、というケースは珍しくありません。

この洗い出しは、1人で頭の中だけで済ませず、経理担当や現場のリーダーに一言確認しておくことをおすすめします。社長の感覚と現場の感覚は、意外とずれていることがあるためです。

ステップ2: 着手時期を逆算する

繁忙期が見えたら、そこから逆算して着手時期を決めます。考え方はシンプルで、「テストや説明会など、現場の協力が必要な工程が繁忙期に重ならないようにする」ことです。

刷新プロジェクトの標準的な期間感がまだ掴めていない場合は、開発会社に相談する段階で納期の見通しをどう読むかを知っておくと逆算がしやすくなります。なぜ計画より遅れがちなのかはなぜ開発は遅れるのか。承継社長が押さえる納期・スケジュールの見方を参考にしてください。

逆算の目安は、次のように工程ごとに考えると整理しやすくなります。

工程現場への負荷繁忙期との関係
要件のすり合わせ・発注準備低い(社長中心)繁忙期でも進められる
開発・構築期間低い(開発会社側の作業が中心)繁忙期でも進められる
現場への説明会・研修高い閑散期に寄せる
テスト・検収高い(現場の協力が必須)閑散期に寄せる
本番移行最も高い閑散期の、さらに落ち着いた時期に寄せる

つまり、要件のすり合わせや開発そのものは繁忙期にかかっても大きな支障は出にくい一方、現場が実際に手を動かす工程は閑散期に収まるよう逆算するのが基本です。開発会社に相談する段階で、「このあたりの時期は現場が動けない」と伝えておくと、スケジュール調整がスムーズになります。

ステップ3: 検収・移行は閑散期の「余白」に寄せる

逆算の中でも特に注意したいのが、検収と本番移行のタイミングです。この2つは現場の負荷が最大になる工程であり、かつ「思ったより時間がかかる」ことが頻繁に起こります。検収で不具合が見つかれば手戻りが発生しますし、本番移行の直後は必ずと言っていいほど小さなトラブルが起きます。

そのため、検収・移行の時期は閑散期の「ど真ん中」ではなく、前後に余白を残した位置に置くことをおすすめします。閑散期の最後のほうに移行日を設定してしまうと、トラブル対応をしているうちに次の繁忙期に突入してしまい、結局は繁忙期にトラブル対応をする羽目になります。

検収でどこを見ればよいか具体的なイメージがまだない場合は、検収とは?発注者がやるべきテストで最低限のチェック観点を確認しておくと、検収期間の見積もりもしやすくなります。

こんなときはどう調整するか

  • 繁忙期が読みにくい業種の場合:天候や急な受注に左右される業種では、完全な閑散期を狙うのが難しいこともあります。その場合は「比較的落ち着いている週」を複数候補として押さえ、開発会社側にも幅を持たせたスケジュールを提示してもらうと現実的です。
  • 繁忙期が年に何度もある場合:繁忙期の合間が短く、まとまった閑散期が取れない会社もあります。無理に一気通貫で進めようとせず、工程を分割して「説明会だけ先に済ませ、本番移行は次の閑散期に回す」といった段階的な進め方も選択肢に入れてください。
  • どうしても繁忙期にずれ込みそうな場合:全体の計画が遅れて、移行時期が繁忙期にかかってしまうことも実際にはあります。その際は無理に予定通り進めるより、開発会社と早めに相談し、移行日をずらす判断をしたほうが結果的に傷が浅く済みます。

まとめ:逆算の起点は「現場が動ける時期」

刷新のスケジュールは、開発会社の都合や社長の意気込みだけで決めるものではありません。起点にすべきは「現場がいつなら動けるか」です。

  • 自社と主要取引先の繁忙期をカレンダーに洗い出す
  • 現場の協力が必要な工程(説明会・テスト・検収・移行)を閑散期に寄せて逆算する
  • 検収・移行は閑散期の余白を残した位置に置き、トラブル対応の時間を確保する

この考え方は、初めての刷新だけでなく、2回目以降のプロジェクトでも変わりません。一度スケジュールの組み方が身につけば、次の刷新の計画も立てやすくなります。全体の進め方に戻りたい場合は、この段階の核記事もあわせてご確認ください。