検収が終わった瞬間、次の課題が目について仕方なくなる

1つの刷新プロジェクトが検収まで終わると、社長の頭の中には不思議な高揚感が生まれます。「思ったよりスムーズに進んだ」「開発会社とのやり取りにも慣れてきた」「じゃあ次はあの業務も」——この勢いに乗って、すぐ次の刷新に着手したくなる気持ちは自然なものです。

ですが、ここで一呼吸置けるかどうかが、その後の刷新が定着するか、社内から静かに反発を受けるかの分かれ目になります。刷新が終わった直後というのは、実はまだ「システムが入っただけ」の状態で、「システムが使われている」状態にはなっていないことが多いからです。

なぜ間隔が必要なのか

新しいシステムが入ってから、現場の社員がそれを当たり前に使いこなすまでには、想像以上に時間がかかります。理由は大きく3つあります。

1つ目は、慣れるまでのタイムラグです。 特に紙やExcel、先代の時代からの台帳に長年慣れてきた社員ほど、新しいやり方に馴染むまで数週間から数ヶ月かかります。最初の1〜2週間は「前の方が早かった」という声すら出るのが普通です。ここで焦って次の刷新を重ねると、社員は「また新しいものが来た」という疲労感だけを抱え、結局どちらも中途半端にしか定着しません。

2つ目は、成果を確認する時間です。 刷新の目的は「システムを入れること」ではなく「業務が楽になること」「ミスが減ること」のはずです。それが実際に効果として出ているかどうかは、最低でも1〜2ヶ月、繁忙期をまたぐ業務であれば1サイクル分の運用を見てからでないと判断できません。効果を確認する前に次の投資判断をするのは、いわば運転しながらタイヤ交換の予約を入れるようなものです。

3つ目は、不具合や運用の粗が出揃うまでの時間です。 どんなに丁寧に検収をしても、実際の業務量・実際の例外パターンに当ててみないと見えてこない不具合があります。この段階での改修依頼や運用調整は、次の刷新の予算とは別枠で見ておく必要があります。

目安となる間隔の考え方

刷新完了後、社内定着期間を経て次の刷新へ進むまでの時間軸を示すフロー図。

明確な正解があるわけではありませんが、実務上の目安としては次のように考えると判断しやすくなります。

刷新の規模定着を見る期間の目安確認すべきこと
部分的な業務効率化(紙・Excelの置き換えなど)1〜2ヶ月現場が自力で操作できているか、問い合わせが減ってきているか
基幹システムに近い刷新(先代システムのリプレイス等)3〜6ヶ月繁忙期を一度越えられたか、月次決算や棚卸しなど周期業務が回ったか
複数部署にまたがる刷新半期〜1年部署間の運用ルールが定着し、属人化した回避策が生まれていないか

ここで大事なのは、「間隔を空ける=何もしない期間」ではないということです。この期間は、社員からの使い勝手のフィードバックを集めたり、想定していなかった使われ方がないかを確認したりする、いわば「刷新の効果測定期間」です。ここをおろそかにすると、次の刷新でも同じ轍を踏むことになりかねません。

定着したら、次の一手をどう選ぶか

定着が確認できたら、次の選択肢は大きく2つに分かれます。

1つは、まだ手をつけていない別の業務領域の刷新です。事業承継後の会社では、たいてい優先順位をつけて1つずつ着手しているはずなので、次に控えている課題があればそちらに進めます。

もう1つは、守りの刷新から一歩進んだ、攻めのIT投資への移行です。紙・Excel・先代システムの置き換えといった「今ある問題を解消する」フェーズが一巡すると、次は生成AIの活用や業務自動化など、「今の会社をもっと伸ばす」フェーズに進む余地が出てきます。これがStage4にあたる領域です。守りの刷新をきちんと定着させた会社ほど、攻めの投資判断もぶれずにできるようになります。

焦らないための判断材料は、コラムにあります

「まだ効果が出ているか分からない」「次に何を優先すべきか迷う」というときは、判断を急がず材料を集めることをおすすめします。例えば、刷新後の運用体制については 運用フェーズの体制。承継後の社内と開発会社の役割分担 で社内と開発会社の役割分担を整理できますし、保守契約の内容を見直すタイミングに悩んだら 保守契約を更新する前に、開発会社から受け取っておくべきもの が参考になります。

そして、定着期間を経て次の投資判断に進む段階では、AI導入の費用対効果、承継社長が経営会議で説明する見積もり方 を読んでおくと、攻めのIT投資への橋渡しがスムーズになります。

次の刷新を急ぐことよりも、今回の刷新を「本当に使われているシステム」に育てることの方が、結果的に会社全体の変化を早めます。