「刷新が終わった」で止まると、次が始まらない
刷新実行フェーズも2〜3年目に入ると、最初の刷新プロジェクトが一段落し、2つ目・3つ目の刷新にも慣れてくる頃です。ここまでくると「守りの整備」も「主要な刷新」もひと通り終わり、達成感を覚えるタイミングでもあります。しかし、ここで気を抜いて「刷新が終わった、あとは運用するだけ」と考えてしまうと、次の体制強化フェーズへの移行がうまく進みません。
体制強化フェーズは、刷新で整えた土台の上に、攻めのIT投資やAI活用、次の後継者を見据えたIT体制づくりへ進む段階です。この移行がスムーズにいくかどうかは、刷新実行フェーズの終盤にどれだけ「引き継ぐべきもの」を意識して整理できたかで決まります。行き当たりばったりで刷新を終えると、体制強化フェーズに入ってから「あれもこれも整理されていない」と足踏みすることになりかねません。
この記事では、刷新実行フェーズの終盤(3年目あたり)に、次の段階へ何を引き継ぐべきかを時系列で整理します。
引き継ぐべきもの①:刷新で得た「勝ちパターン」の言語化
複数の刷新プロジェクトを経験すると、自社なりの成功パターンと失敗パターンが見えてきます。たとえば「繁忙期を避けたスケジュールが有効だった」「古参社員を早い段階で巻き込むと合意が早い」といった、自社固有の学びです。
これを言語化せずに次の段階へ進むと、体制強化フェーズで新しい投資判断をするたびに、また一から手探りをすることになります。1回目と2回目の刷新で何を変えたか、その結果どうだったかを振り返っておくと、体制強化フェーズでの意思決定が格段に速くなります。2つ目以降の刷新、1回目と何を変えるべきかを参考に、自社なりの勝ちパターンを言葉にしておきましょう。
引き継ぐべきもの②:開発会社・ベンダーとの関係の整理
刷新実行フェーズでは、複数の開発会社やベンダーとやり取りをしてきたはずです。どこが信頼できる相談相手か、どこは限定的な役割にとどめるべきかという「自社にとってのベンダーマップ」ができているかどうかで、体制強化フェーズでの動きやすさが変わります。
- 継続して付き合うべきベンダーと、その理由
- 一度きりの関係にとどめたベンダーと、その理由
- 運用フェーズに入ってからの役割分担(社内でやること・ベンダーに任せること)
この整理ができていないと、体制強化フェーズで新しい投資(AI活用や業務自動化など)を検討するたびに、また一から相談先を探すことになります。運用フェーズの体制。承継後の社内と開発会社の役割分担を参考に、現時点での役割分担を書き出しておくとよいでしょう。
引き継ぐべきもの③:古参社員との合意形成の「型」
刷新実行フェーズを通じて、古参社員をどう巻き込めば合意が得られやすいかという勘所ができてきているはずです。これは属人的な感覚のままにせず、体制強化フェーズでも使える「型」として引き継ぐ価値があります。
体制強化フェーズでは、AI活用や新しいツール導入など、さらに現場の理解を得にくいテーマを扱うことが増えます。刷新実行フェーズで得た合意形成の勘所——誰に先に話すべきか、どのタイミングで説明会を開くべきか——をそのまま応用できれば、体制強化フェーズの立ち上がりが早くなります。古参社員を巻き込みながら刷新を進める、承継社長の立ち回り方で扱った内容を、自社版にアレンジして残しておくことをおすすめします。
引き継ぐべきもの④:投資の効果測定の土台
刷新実行フェーズでは「止まったら困るものへの対応」が中心でしたが、体制強化フェーズでは「投資に見合う効果が出ているか」を測る視点が重要になります。刷新実行フェーズのうちに、何かしらの効果測定の型(コスト削減額、作業時間の短縮、ミスの減少など)を1つでも作っておくと、体制強化フェーズでの投資判断の説明がしやすくなります。
体制強化フェーズで実際にどう投資効果を測るかは、攻めのIT投資の効果測定、いつ・何を見て判断すべきかで扱っています。
引き継ぎの整理は、刷新完了の「直後」ではなく「終盤」に
引き継ぎの整理は、最後の刷新プロジェクトが完了してから始めるのではなく、完了が見え始めた終盤のうちに着手するのがコツです。プロジェクトの記憶が新しいうちに振り返った方が、勝ちパターンも失敗パターンも正確に言語化できますし、次のプロジェクトへ間隔を空けるべきタイミングの判断材料にもなります。刷新完了後、次の刷新までどれくらい間隔を空けるべきかも合わせて確認しておくと、体制強化フェーズへの移行計画が立てやすくなります。
刷新実行フェーズは、個々のプロジェクトを成功させることがゴールではありません。そこで得た経験を体制強化フェーズに持ち越せて初めて、フェーズ移行の意味があります。3年目に差しかかったら、目の前の刷新だけでなく、次に何を引き継ぐかにも意識を向けてみてください。
