先代が元気なうちしか、聞けないことがある
承継の準備を進めるなかで、「システムのことは引き継ぎ後に困ったら調べればいい」と考えていないでしょうか。実際には、先代が会社を離れてしまってからでは、二度と分からなくなることがたくさんあります。契約書に書かれていない口約束、パスワードを記憶だけで運用しているアカウント、なぜそのやり方になったのかという経緯。これらは先代の頭の中にしかない情報で、聞ける・見られるうちに聞いておくしかありません。
このリストは、先代とまだ会話ができる今の時期に、システム・契約・アカウント・紙業務の4カテゴリで確認しておきたい25の質問をまとめたものです。全部を一度に聞く必要はありません。世間話のついでに少しずつ、あるいは引き継ぎの面談を設定して、チェックしながら埋めていく使い方を想定しています。
システムについて聞くこと
- [ ] 1. 今動いているシステムは、誰がいつ作ったものですか。 開発時期が分かれば、技術の古さや修理の難易度の見当がつきます。
- [ ] 2. 仕様書や設計書は残っていますか。どこにありますか。 紙・PDF・USBメモリなど、保管場所ごと確認しておくと後で探す手間が省けます。
- [ ] 3. 「触ると壊れる」と言われている処理はありますか。それは何をしていますか。 誰も触れない箇所ほど、先代の記憶だけが頼りです。
- [ ] 4. システムが止まったら、業務のどこが止まりますか。 受発注・請求・在庫管理など、依存関係を先代の感覚で聞いておくと初動が早くなります。
- [ ] 5. サーバーやパソコンの管理者パスワードは誰が知っていますか。 先代しか知らない、というケースは珍しくありません。
- [ ] 6. バックアップは取っていますか。最後に復元を試したのはいつですか。 「取っている」と「復元できる」は別の話です。
詳しくは会社を継いだ最初の1週間。先代のシステムをどう引き継ぐかや先代システムの現状調査(棚卸し)のやり方を参照してください。
契約について聞くこと
- [ ] 7. システムやSaaSの契約は、誰の名前・どの会社の名前で結んでいますか。 個人名義になっている契約は、承継のタイミングで見落とされがちです。
- [ ] 8. 開発会社や保守会社との契約書は、どこに保管されていますか。 紛失している場合は、先代の記憶を頼りに開発会社へ再発行を依頼する必要があります。
- [ ] 9. 保守契約の内容と、実際にやってもらっている作業は一致していますか。 契約書の文言と実態がずれていることは、口頭確認でしか分かりません。
- [ ] 10. 保守費は年々上がっていますか。値上げの経緯を覚えていますか。 交渉の余地があるかどうかの材料になります。
- [ ] 11. 契約の自動更新日はいつですか。解約の申し出期限は何ヶ月前ですか。 期限を逃すと、望まない自動更新に巻き込まれます。
- [ ] 12. 「ここでしか直せない」と言われているベンダーはありますか。 ロックインの実態を先代がどう認識しているかを確認します。
- [ ] 13. ソースコードや納品物一式は、自社で保管していますか。 開発会社側にしかない場合、権利関係を今のうちに確認しておく必要があります。
詳しくは先代の代からの開発会社に「うちでしか直せません」と言われたときに確認する契約書の項目や先代の代からの開発会社と連絡が取れなくなったとき、まず確認すべき3つのことを参照してください。
アカウントについて聞くこと
- [ ] 14. 会社のドメインは誰の名義で、どこで契約していますか。 個人名義のドメインは、承継後のトラブルの典型例です。
- [ ] 15. サーバーのレンタル契約は誰の名義ですか。支払いはどの口座・カードからですか。 名義人の連絡が取れなくなると、更新も解約もできなくなります。
- [ ] 16. 会社で使っているクラウドサービス(メール・会計・顧客管理など)を全部挙げてもらえますか。 先代しか把握していないサービスが必ず数個は出てきます。
- [ ] 17. それぞれのサービスの管理者アカウントは誰ですか。 利用者アカウントと管理者アカウントは別、というケースがよくあります。
- [ ] 18. パスワードはどこに、どんな形で控えていますか。 頭の中だけ、という回答なら、今のうちに書き出してもらう必要があります。
- [ ] 19. 退職した社員のアカウントは、削除や無効化をしていますか。 放置されたアカウントは、承継後にまとめて棚卸しする対象になります。
- [ ] 20. 二段階認証を設定しているサービスはありますか。その通知先の電話番号やメールは誰のものですか。 先代個人の携帯電話に紐づいていると、承継後にログインできなくなります。
詳しくは先代の退職者PCとアカウント、承継前にやる棚卸しの手順を参照してください。
紙業務について聞くこと
- [ ] 21. Excelや紙の台帳で管理しているものは何がありますか。 システム化されていない業務ほど、先代の頭の中にルールがあります。
- [ ] 22. そのExcelの関数やマクロは、誰が作りましたか。今も分かる人はいますか。 作った本人以外誰も解読できない、という状態は珍しくありません。
- [ ] 23. FAXや紙でやり取りしている取引先はどこですか。なぜ紙のままなのですか。 「昔からの取引先の希望だから」なのか「システム化のきっかけがなかっただけ」なのかで対応が変わります。
- [ ] 24. 判子を回している稟議や決裁のフローは、どの業務にありますか。 承継後にデジタル化を検討する際の棚卸しの土台になります。
- [ ] 25. 紙やExcelの運用で、過去にトラブルになったことはありますか。 二重入力や入力漏れなど、先代が経験した失敗談は貴重な情報です。
詳しくは「とりあえず紙・Excel」をやめられない会社が、承継後に最初にやることを参照してください。
聞いたら、書き残しておく
質問して終わりではなく、答えを記録に残すところまでがセットです。口頭で聞いた内容も、メモやスプレッドシートに書き起こしておかないと、数ヶ月後には自分の記憶からも薄れてしまいます。記録の作り方については引き継ぎ書がない会社が承継後すぐに始めるシステム記録術も参考にしてください。
先代への質問は、system-legacyの全体像に位置づけられる一歩です。承継前にまだ間に合う準備の全体像は、核記事「会社を継いだ最初の1週間。先代のシステムをどう引き継ぐか」で確認できます。
