「1年終わってから一気に」だと出遅れる

承継1年目は、緊急対応に追われる期間だとよく言われます。実際その通りで、退職者アカウントの整理、動かないシステムの原因調査、バックアップの確認など、目の前の火消しだけで1年があっという間に過ぎていきます。

だからこそ、多くの社長は「1年目が終わってから、Stage2(刷新の検討)についてゆっくり考えよう」と思いがちです。しかし、これには落とし穴があります。刷新の検討には、情報収集・相談先探し・社内合意形成といった、着手から実際の発注まで数ヶ月単位の助走期間が必要だからです。1年目が終わってからすべてをゼロから始めると、実際に刷新が動き出すのは2年目の後半、下手をすると3年目にずれ込みます。

重要なのは、「1年目が終わったらStage2」ではなく、「1年目の後半のどこかから、緊急対応と並行してStage2の助走を始める」という発想です。この記事では、その並行開始のタイミングをどう見極めるかを整理します。

判断の分かれ目は「緊急対応が一巡したか」

承継1年目の後半、Stage2の準備をいつから並行して始めていいか

Stage2の助走を始めてよいかどうかは、暦の上での「何ヶ月目か」よりも、緊急対応にどれだけ目処がついたかで判断すべきです。目安は次の2パターンです。

パターン1: 緊急対応が一巡し、繰り返しの運用フェーズに入っている

退職者アカウントの棚卸し、バックアップの復元テスト、単一障害点の洗い出しといった、承継直後に必ずやるべき項目に一通り着手済みで、「次に何が起きても慌てない」感覚が持てている状態です。この状態になっていれば、1年目の後半、たとえば9〜10ヶ月目あたりからStage2の助走を並行して始めても、緊急対応の質を落とさずに進められます。

パターン2: まだ緊急対応の途中で、新しい問題が次々に見つかっている

先代のシステムを調べるたびに「これも危なかった」という発見が続いている状態です。この場合は、緊急対応を優先し、Stage2の助走はもう少し待つべきです。無理に並行させると、どちらも中途半端になります。

この見極めが難しい場合は、1年目の終わりに、何ができていればStage3に進んでいいか で挙げた4項目(退職者アカウント・バックアップ・管理台帳・単一障害点)の大枠が見えているかどうかを目安にするとよいでしょう。この4項目の大枠が見えていれば、パターン1に近い状態だと判断できます。

並行して始めてよい「助走」の中身

Stage2の助走として1年目の後半から始められることは、「発注」ではなく「情報収集と土台づくり」です。具体的には次のようなものがあります。

これらはいずれも「まだ決めない」段階の情報収集です。発注や契約に踏み込むわけではないため、緊急対応と並行して進めても大きな負担にはなりません。むしろ、この段階で情報を持っておくことで、2年目に入ってから実際に動き出すスピードが大きく変わります。

まだ並行してはいけないこと

一方で、1年目の後半であっても、次のことは避けるべきです。

  • 具体的な発注先を1社に絞り込み、契約に進める
  • 現場の合意形成を飛ばして、トップダウンで刷新プロジェクトを立ち上げる
  • 緊急対応がまだ終わっていない中で、刷新プロジェクトの人員を割く

特に、古参社員との信頼関係がまだ十分に築けていない段階で刷新の話を進めると、古参社員の「今のままでいい」が招く停滞と、向き合い方の最低ライン にあるような抵抗を招きやすくなります。助走はあくまで社長個人、あるいは少人数での情報収集にとどめ、社内を巻き込んだ本格的な始動はStage2に入ってからにするのが安全です。

並行期間の目安は2〜3ヶ月

緊急対応が一巡したと感じたタイミングから、実際にStage2へ移行するまでの助走期間は、目安として2〜3ヶ月程度を見ておくとよいでしょう。たとえば1年目の9ヶ月目に助走を始めれば、11〜12ヶ月目には、ある程度の情報と判断材料が揃った状態でStage2の入り口に立てます。

この並行期間中は、緊急対応を最優先にしつつ、週に数時間程度を情報収集に充てる、というくらいのペース配分が現実的です。全部を一気にやろうとせず、「今は助走の段階だ」と割り切ることが、結果的にStage2への移行をスムーズにします。

さらに詳しく知りたいときは

Stage2の助走に関わる判断は、以下のコラムでも詳しく扱っています。

1年目の後半は、緊急対応を終わらせる期間であると同時に、次の段階への静かな準備期間でもあります。両方を意識してカレンダーを引いておくことが、2年目のスタートダッシュにつながります。