初回の顔合わせで止まっていないか
承継後、開発会社と最初に顔合わせをする社長は多い。先代の代から付き合いのあるベンダーに挨拶に行き、システムの概要を聞き、名刺交換をして終わる。だがその後、四半期が過ぎても半年が過ぎても、次に何を聞けばいいか分からないまま関係が惰性で続いているケースが目立つ。
これは怠慢ではない。1年目は聞くべきことが四半期ごとに変わっていくものであり、初回の顔合わせで聞くべき内容と、3ヶ月後・半年後・9ヶ月後に聞くべき内容はそもそも別物だ。最初の質問リストをそのまま使い続けようとするから、聞くことがなくなったように感じてしまう。
初回の顔合わせで何を聞くべきかはひとまず置き、ここでは四半期という単位でその後の質問をどう更新していくかに絞る。
判断の分かれ目 — 関係の状態はどちらか
四半期ごとの確認事項を考えるうえで、まず自社と開発会社の関係が次のどちらに近いかを見極める必要がある。
パターン1: 先代の代からの付き合いが続くベンダー 契約の経緯や技術的な背景を先代しか知らない可能性があり、確認すべき事項は「過去の経緯の掘り起こし」に重心が置かれる。
パターン2: 承継を機に新しく関係を作るベンダー 過去の経緯よりも、これから先の体制や連絡フローを確立することに重心が置かれる。
どちらの関係かによって、四半期ごとに聞くべき質問の性質が変わる。
パターン1の場合 — 四半期ごとに過去を掘り下げる
先代の代からのベンダーとの関係では、初回で全ての経緯を聞き出すのは現実的ではない。四半期単位で少しずつ掘り下げていく方が、相手にとっても答えやすい。
1回目の四半期では契約の全体像と保守範囲を確認し、先代の代からの開発会社に「うちでしか直せません」と言われたときに確認する契約書の項目にあるような、属人化のリスクがどこにあるかを見る。2回目の四半期では、ソースコードの権利関係やデータのエクスポート可否など、将来的に乗り換えが必要になった場合の選択肢を確認する。先代システムのソースコードの権利は誰にあるか、納品物から確認する方法、データをエクスポートできるか、古参ベンダーからの乗り換え前に確認すべきことが参考になる。3回目の四半期では、保守費が年々どう推移してきたかを確認し、先代の代から年々上がっていく保守費の契約を見直すタイミングを踏まえて次年度以降の交渉材料を蓄積しておく。
パターン2の場合 — 四半期ごとに体制を固める
新しく関係を作るベンダーの場合は、過去の掘り起こしよりも今後の連絡体制を早期に固めることが優先になる。1回目の四半期で担当者の連絡先と対応範囲を明確にし、障害発生時にどこまで対応してもらえるかを確認する。2回目以降は、運用フェーズでの役割分担がずれていないかを定期的にすり合わせていく。運用フェーズの体制。承継後の社内と開発会社の役割分担が参考になる。
共通して意識すべきこと
パターンのどちらであっても、四半期ごとの確認は「初回の延長」ではなく「関係の育て方」として捉える方がうまくいく。特に先代の代からのベンダーとは、性急に条件面を問い詰めると角が立ちやすい。先代の顔を立てながら、開発会社と長期的にうまく付き合う方法にあるとおり、先代との関係性を尊重しつつ、少しずつ自社主導の情報を増やしていくペース配分が1年目には向いている。
1年間を通じた質問の変化
まとめると、1年目の開発会社との関係は「聞くことが尽きる」のではなく「聞くべきことの中身が四半期ごとに変わる」と捉えるのが正しい。初回は概要把握、次の四半期はリスクの所在確認、その次は将来の選択肢確認、というように段階を踏むことで、1年経った頃には契約・技術・関係性の3つの面で、開発会社の全体像が自然と見えてくるようになる。焦って全部を一度に聞き出そうとせず、四半期という単位を使って少しずつ関係を育てていけばいい。
