少人数だからこそ、一人の反発が全体を止める
従業員10人未満の会社は、刷新のスピードを出しやすいと思われがちです。決裁者が社長一人で、稟議に何段階も回す必要がなく、思い立てばすぐに動ける規模だからです。しかし実際には、少人数の会社ほど刷新がうまく進まないケースがあります。理由は単純で、一人ひとりが複数の業務を兼務しているため、その中の一人が「このやり方は困る」と反発すると、業務全体が止まってしまうからです。
従業員が50人、100人の会社であれば、ある部署の一部が刷新に反発しても、他の部署の業務は動き続けます。しかし10人未満の会社では、経理も総務も現場対応も、同じ数人が兼務していることが多く、その中の誰か一人でも「ついていけない」となると、会社全体の業務が滞りかねません。この記事では、この構造を踏まえた上で、承継2年目にどこから着手すべきかを整理します。
判断の分かれ目:全員を巻き込める刷新か、一部だけの刷新か
刷新の候補が複数ある場合、まず確認すべきは「その刷新が全員に関係するか、一部の担当者だけに関係するか」です。
| 観点 | 全員が関わる刷新 | 一部の担当者だけが関わる刷新 |
|---|---|---|
| 反発が起きた場合の影響 | 誰か一人が反発しても、他の全員が「自分ごと」として支えてくれやすい | 反発した担当者が孤立し、業務が個人の抵抗一つで止まりやすい |
| 効果の実感されやすさ | 全員が「楽になった」を体感でき、次の刷新への協力を得やすい | 効果が一部にしか見えず、他のメンバーの関心が薄いまま進む |
| 10人未満での適性 | 最初の一手として向いている | 2手目以降、最初の刷新で信頼を得てから着手するほうが安全 |
10人未満の会社では、最初の刷新に「全員が関わり、全員が恩恵を感じられるもの」を選ぶことが、その後の刷新全体の成否を左右します。
まず着手すべきもの:全員が使う共通業務の刷新
具体的には、次のような、部署や役割を問わず全員が日常的に触れる業務から着手するのが安全です。
- 勤怠管理や経費精算など、全員が毎月必ず行う業務: 特定の担当者だけでなく、社長を含む全員が当事者になるため、「自分には関係ない」という距離の取り方をされにくい領域です
- 紙・FAX・手書き台帳など、日々の負担が全員に見えている業務: 効果が数字ではなく実感として伝わりやすく、「楽になった」という声が自然に社内で共有されます
- 判子の回覧や紙の稟議など、承認フローに関わる業務: 承認を待たされる側・回す側の双方が不便を感じているため、刷新への同意が得やすい領域です
逆に、特定の担当者しか使わない専門システム(たとえば経理担当者だけが使う会計ソフトの入れ替えなど)を最初の一手にすると、恩恵を受けるのがその担当者だけになり、他のメンバーからは「社長がまた何かやっている」程度にしか見られません。孤立した反発が起きやすいのはこのパターンです。
紙・Excel運用からの脱却を具体的にどう進めるかは、「とりあえず紙・Excel」をやめられない会社が、承継後に最初にやることと判子の回覧をやめる。承継後の稟議・決裁フローのデジタル化で具体的な手順に触れています。
兼務者が多いからこそ、外注の使い方も変わる
10人未満の会社では、社内に「システム担当」を専任で置く余裕がないことがほとんどです。総務が兼務、あるいは社長自身が窓口になっているケースも多いはずです。この体制で刷新を進める場合、外注先に丸ごと任せるか、自分たちでできる範囲を見極めるかの判断が、規模の大きい会社以上に重要になります。
少人数の会社が発注前に整理しておくべきことは、内製化とアウトソースの分岐点、承継社長が判断する視点を参照してください。また、最初から大きな刷新を発注するのではなく、小さく試してから広げる進め方が、少人数の会社にはよく合います。小さく発注して試す、承継後のPoC発注のすすめで扱っている考え方です。
最初の刷新が終わったら、次の順番を決め直す
全員参加型の刷新が一つ終わり、「刷新は思ったより悪くない」という感触が社内に生まれたら、次の段階に進めます。ここで初めて、特定の担当者だけが使う専門的な業務システムの刷新に着手しやすくなります。最初の成功体験があることで、次に反発が出たとしても、他のメンバーが「今回は前よりうまくいくだろう」と静観してくれる余地が生まれるためです。
逆に、最初の刷新で強引に進めて一人でも強い不満を残してしまうと、次の刷新の際にその不満が蒸し返され、着手そのものが難しくなります。10人未満の会社では、一つひとつの刷新の「後味」が、次の刷新の難易度に直結すると考えておいてください。
まとめ:小さな会社ほど、最初の一手を選び間違えない
従業員10人未満の会社は、決裁の速さという強みがある一方、一人の反発が業務全体を止めるという弱点も抱えています。この弱点を踏まえると、刷新2年目にまず着手すべきは、全員が日常的に触れる共通業務の刷新です。
特定の担当者だけに関係する専門的な刷新は、最初の成功体験を作ってから着手する方が安全です。着手順を誤らなければ、少人数であることはむしろ刷新のスピードを出せる強みに変わります。全体の優先順位のつけ方は、この段階の核記事も合わせて確認してください。
