気づけば「いつもの1社」になっている

刷新に着手して2〜3年目に入ると、多くの会社で自然と同じ現象が起きます。最初は複数社を比較して選んだはずの外注先が、いつの間にか「困ったらまずここに相談する1社」になっているという状態です。

これは悪いことではありません。担当者が業務内容を理解してくれていて、毎回ゼロから説明しなくて済む、過去の経緯を踏まえた提案をしてくれる——関係が深まることには明確なメリットがあります。ですが、ここで一度立ち止まって考えておくべきなのは、「このまま1社に絞っていくのか、それとも都度、複数社に声をかける体制を維持するのか」という選択です。

この判断を意識的にしないまま流れで固定化してしまうと、数年後に「本当にこの金額は適正なのか」を確認する手段を自分で手放していたことに気づく、という展開になりかねません。

判断の分かれ目1:案件の性質で決める

まず押さえておきたいのは、すべての発注を同じ方針で扱う必要はないという点です。案件の性質によって、一本化に向くものと、相見積もりを取り続けるべきものが分かれます。

一本化に向く案件——既存システムの保守・小規模な改修・緊急対応が必要な障害対応など。これらは、業務内容や過去の経緯を理解している相手に頼む方が、説明コストが低く、対応も速くなります。都度別の会社に説明し直すオーバーヘッドの方が、価格差より大きくなりやすい領域です。

相見積もりを維持すべき案件——新規の基幹システム刷新、大規模なリプレイス、初期費用が大きい投資判断など。金額のインパクトが大きい案件ほど、比較対象がないまま1社の言い値で進めるリスクが上がります。

実務的には、「保守・小規模改修は今の1社に、新規の大型案件は都度2〜3社に声をかける」という使い分けが、多くの会社にとって現実的な落としどころです。

判断の分かれ目2:今の1社との関係は「対等」か

次に確認すべきは、今つきあいのある会社との関係が、対等な緊張感を保てているかどうかです。目安になるサインを整理します。

外注先との関係を一本化するか複数社併用を続けるか、対等な関係が保てているかで判定する図。

対等な関係が保てているサイン

  • 見積もりの内訳を求めれば、都度きちんと説明してもらえる
  • 他社の相場観と比べても、大きな乖離がない
  • 「他にも選択肢はあるが、今回もお願いしたい」という気持ちで発注できている

関係が固定化しすぎているサイン

  • 見積もりが「一式」でしか出てこなくなった、あるいは金額の説明が以前より雑になった
  • 他社に話を聞くこと自体を切り出しづらい空気がある
  • 「うちでないと分からない」という発言が増えてきた

後者に近づいている場合は、ベンダーロックインとは?先代の代から陥りがちな典型パターンで示されているパターンに、自社が知らないうちに入り込んでいないか確認しておくべきタイミングです。1社に絞ること自体が問題なのではなく、比較する選択肢を自ら手放したことに気づけなくなることが問題です。

判断の分かれ目3:先代の代からの付き合いかどうか

つぎてなびの読者に特有の論点として、今の外注先が先代の代からの付き合いかどうかも判断に関わってきます。

先代の代からの会社である場合、一本化には「関係を大事にしている」という対外的な意味合いも加わります。ここで無理に相見積もりに切り替えると、角が立つことを心配する社長は多いはずです。しかし、これも義理と実務は分けて考える必要があります。年に1回でも大型案件のタイミングで他社の相場を確認することは、今の会社への不信の表明ではなく、経営としてごく普通の確認作業です。切り出し方に迷う場合は先代の代からの開発会社に「うちでしか直せません」と言われたときに確認する契約書の項目も参考になります。

併用する場合の運用コスト

複数社体制を維持すると決めた場合、注意したいのはその分の管理コストです。会社ごとに把握している仕様や経緯が異なると、情報が分散し、結局「あの会社に聞かないと分からない」という属人化が別の形で再発します。

複数社に発注する場合でも、システムの仕様・契約内容・担当者の連絡先は自社側で一元管理しておくことが前提になります。承継したらまず作る、システム管理台帳のテンプレートを使えば、どの会社に何を頼んでいるかを社内で見失わずに済みます。

まとめとして

一本化か併用かは、どちらが正解というものではなく、案件の性質・今の関係の対等さ・先代からの経緯という3つの軸で都度判断するものです。2〜3年目という今のタイミングで一度この整理をしておけば、5年後に「気づいたら1社しか選択肢がなかった」という状態を避けられます。