気づけば、名刺が何枚も出てくる
承継してしばらくすると、先代の引き出しや過去のメールから、複数の開発会社の名刺や契約書が次々と出てくることがあります。基幹システムを作った会社、ホームページを管理している会社、業務用ツールを保守している会社、すでに連絡が取れなくなっている会社。一社ごとに丁寧に挨拶回りをする時間は1年目にはなく、かといって放置すれば、いざというときにどこに連絡すればいいか分からないまま事故が起きます。
ここで悩ましいのは、「全員に一斉に連絡する」のも「後回しにする」のも、どちらも危険だという点です。一斉連絡は準備不足のまま各社と表面的な顔合わせに終わりがちで、後回しは連絡すべきタイミングを逃したまま関係が疎遠になってしまいます。1年目に必要なのは、複数のベンダーを同列に扱うのではなく、優先順位をつけて順番に連絡していく判断です。
分かれ目は「止まったら困る度合い」と「関係の危うさ」
連絡する順番を決める軸は二つあります。一つは、そのベンダーが管理するシステムが止まったときに事業へ与える影響の大きさ。もう一つは、そのベンダーとの関係が今どれだけ不安定か、です。
次のように自問して、手元のベンダー一覧を仕分けてみてください。
- そのベンダーが管理するシステムが止まると、受発注や請求など、日々の業務が即日止まるか
- 連絡先の担当者が変わっている、あるいは会社自体の存続が怪しい兆候はないか
- 保守契約の更新時期が近づいていないか
- 先代個人と担当者の信頼関係だけで成り立っていて、後任である自分の顔をまだ知らない状態ではないか
事業影響が大きく、かつ関係が不安定なベンダーほど、優先順位は高くなります。逆に、影響が小さく関係も安定しているベンダー(定期的にやり取りが続いている、担当者も把握できている)は、急いで顔合わせをしなくても当面の実害は出にくいところです。
最優先:基幹システムを握るベンダーへ
最初に連絡すべきは、受発注や会計など、止まると事業に直結する基幹システムを管理しているベンダーです。ここは先代との関係の深さに関わらず、最優先で顔合わせをしてください。目的は仕事の依頼ではなく、まず「担当者が誰で、何かあったときにどう連絡すればいいか」を確認することです。
顔合わせの場では、次を最低限確認しておくと後が楽になります。
- 現在の契約範囲と保守内容
- 障害発生時の連絡先と対応時間
- ソースコードや仕様書など、成果物の所在
最初の顔合わせの進め方は会社を継いだ最初の1週間。先代のシステムをどう引き継ぐかにも触れていますので、複数社ある場合はこの内容を基幹システムのベンダーから順に適用していくイメージで進めてください。
次点:関係が不安定なベンダーへ
基幹システムほどの重要度はなくても、連絡が取りづらい、担当者が退職したらしい、契約書の所在があいまい、といった「関係が不安定」なベンダーは早めに手を打つべき対象です。放置している間に完全に連絡が取れなくなると、ソースコードの引き継ぎすら不可能になるおそれがあります。
連絡が取れる場合は関係の維持を、すでに取れなくなっている場合はまず何を確認すべきかを押さえておく必要があります。先代の代からの開発会社と連絡が取れなくなったとき、まず確認すべき3つのことに具体的な手順をまとめていますので、該当するベンダーがあれば早めに目を通してください。
後回しでよい:関係が安定している周辺ベンダーへ
影響範囲が小さく、担当者ともやり取りが続いていて、契約内容も把握できているベンダーについては、1年目のうちに急いで顔合わせをする必要はありません。日常的なやり取りの中で自然に関係を引き継いでいけば十分です。ただし「後回し」と「放置」は違います。優先度が低いベンダーの一覧も、いつかは目を通す前提で記録だけはしておいてください。
全体の連絡順を決めてから動く
複数のベンダーがいる場合、大切なのは思いついた順や声の大きい順に連絡することではなく、事業影響と関係の安定度という二軸で一覧を作り、優先順位を決めてから動くことです。先代の顔を立てながら関係を続けていく必要がある相手も多いはずですので、先代の顔を立てながら、開発会社と長期的にうまく付き合う方法も参考にしながら、慌てず順番に手を打っていってください。1年目のゴールは全社と深い関係を築くことではなく、いざというときに困らない連絡網を作ることです。
