顔合わせの前に、身構えすぎなくていい

先代の代から付き合いのある開発会社の担当者と、初めて顔を合わせる。この場面に、必要以上の緊張感を持つ承継社長は少なくありません。「専門用語で丸め込まれるのでは」「今の契約が高いのか安いのかも分からない」「先代とは違う対応をされたらどうしよう」。そう考えると、身構えてしまうのも無理はありません。

ですが、1年目のこの顔合わせは、契約を見直す場でも、値段交渉をする場でもありません。目的はただひとつ、「今どういう体制で、何を任せているのかを知る」ことです。ここを間違えると、聞くべきことを聞けないまま終わってしまったり、逆に踏み込みすぎて相手を身構えさせてしまったりします。

この記事では、初回の顔合わせで話すべきことを順番に整理します。

話す順番は4つだけ

1年目に開発会社と初めて顔合わせする際に話す4つのステップ(自己紹介と体制確認→現状の契約内容の確認→今後の連絡窓口の確認→契約見直しの話はまだしない)を示すフロー図。

初回の面談で確認したいことは、細かく数えればいくらでも出てきます。ですが1回の面談で全部を消化しようとすると、相手も身構えますし、こちらも消化不良で終わります。初回は次の4つの順番で十分です。

  1. 自己紹介と、双方の体制確認
  2. 現状の契約内容の確認
  3. 今後の連絡窓口の確認
  4. (この段階ではまだ)契約見直しの話はしない

順番に見ていきます。

ステップ1:自己紹介と体制確認

まずは自分がどういう立場で会社を継いだか、簡単に伝えます。難しく考える必要はなく、「先代から会社を継いで、今後は自分が窓口になる」ということが伝わればそれで十分です。

そのうえで確認したいのが、相手側の体制です。

  • 自社の担当窓口は誰か(先代時代と同じ人か、変わっているか)
  • 実際の開発・保守作業をしているのは誰か(担当営業と実務担当が別会社・別チームということもあります)
  • 緊急時の連絡先はどこか、営業時間外の対応はあるか

ここで担当者が変わっていることが分かった場合は、いつ・なぜ変わったのか、引き継ぎはきちんと行われているのかも聞いておくと安心です。担当者交代のタイミングで情報が抜け落ちるケースは珍しくありません。詳しくは開発会社の担当者が変わったときの引き継ぎ確認を参考にしてください。

ステップ2:現状の契約内容の確認

体制が分かったら、次は「今、何にいくら払って、何をやってもらっているか」の確認です。この段階でやりたいのは契約の是非を判断することではなく、事実を把握することです。

確認しておきたい項目は次の通りです。

確認項目聞き方の例
契約の種類保守契約か、都度対応か、両方か
月額・年額費用現在いくら払っているか
対応範囲月額費用に何が含まれ、何が追加費用になるか
契約期間・更新時期いつまでの契約で、次の更新はいつか
稼働しているシステム保守対象は具体的に何のシステムか

ここで金額の高い・安いを判断する必要はありません。まずは「何にいくら払っているか」を正確に把握することが目的です。相場観と照らした判断は、もう少し情報が集まってからで構いません。判断の材料は月額保守費で何をやってもらえるのか。相場の考え方にまとめています。

ステップ3:今後の連絡窓口の確認

最後に、今後のやり取りの窓口を確認します。「何かあったときは誰に、どの手段で連絡すればいいか」を明確にしておくと、この先の運用がスムーズになります。

  • 平常時の連絡窓口(メール・電話・チャットツールなど)
  • 緊急時(システム障害など)の連絡窓口と対応時間
  • 定例のやり取りがあるか(月次報告、定期ミーティングなど)

この場で決めた連絡フローは、口約束のままにせず、面談後に自分でメモを残しておくことをおすすめします。

ステップ4:契約見直しの話は、まだしない

ここが1年目の顔合わせで一番大事な距離感です。現状を把握してみると、「保守費が高い気がする」「対応が遅そうだ」といった違和感を覚えることもあるでしょう。ですが、初回の顔合わせでその違和感をそのまま契約見直しの話に持っていくのは避けてください。

理由は単純で、まだ判断材料が足りないからです。

  • 今のシステムがどれだけ複雑で、その保守にどれだけの手間がかかっているか分かっていない
  • 先代がこの開発会社をなぜ選び、どんな経緯で今の契約になったか分かっていない
  • 他の開発会社と比べて、今の条件が本当に高いのか安いのか分からない

この段階で契約の是非を判断するのは時期尚早です。1年目はまず様子を見て、相手がどう対応してくれるか、システムがどう動いているかを実際に見る期間と割り切ってください。契約を見直すべきかどうかの判断は、もう少し先、社内の状況が見えてきた段階で改めて行うものです。判断のタイミングについては先代の代から年々上がっていく保守費の契約を見直すタイミングで扱っています。

また、先代の代から続く関係である以上、「先代の顔を立てる」という要素も無視できません。焦って関係を壊してしまうと、後で本当に見直しが必要になったときに、かえって話がこじれることもあります。

顔合わせが終わったら、記録を残す

面談が終わったら、聞いた内容をその日のうちに簡単でいいのでメモに残してください。体制、契約内容、連絡窓口。この3つを書き残しておくだけで、後々「あのとき何て言っていたか」を思い出す手間が省けます。

この記録は、いずれ承継後のシステム管理台帳を作る際の土台にもなります。今すぐ本格的な台帳を作る必要はありませんが、面談メモという形で最初の一歩を踏み出しておくと、後の作業がぐっと楽になります。

まとめ:1年目は「知る」だけでいい

初めての顔合わせで目指すのは、契約を変えることでも、相手を評価することでもありません。「今どういう体制で、何をいくらで任せているか」を正確に知ることだけです。

体制を聞き、契約を聞き、連絡窓口を確認する。そして、違和感があってもこの場では見直しの話を持ち出さない。この距離感さえ守れれば、1年目の顔合わせとしては十分です。契約を見直すかどうかの判断は、社内の状況がもう少し見えてきてから、落ち着いて行いましょう。