「終わった直後」の高揚感に流されていいか

先代のシステムの棚卸しを終え、紙・Excel運用から脱却し、最低限のセキュリティ対策も整った。守りの整備が完了したこの瞬間、多くの承継社長は勢いに乗って次の投資に進みたくなる。実際、この高揚感自体は悪いものではない。整備を最後までやり切った達成感と、社内から「次は何をやるんですか」という期待の声が重なるタイミングだからだ。

しかし、ここで攻めのIT投資にすぐ着手するべきか、それとも一定期間を置いてから始めるべきかは、会社の状態によって答えが変わる。守りの整備が「本当に終わったのか」を確かめる時間を挟むかどうかが、この段階の判断の分かれ目になる。

分かれ目は「整備が安定稼働で証明されているか」

守りの整備が終わってから、攻めのIT投資まで空けるべき期間の目安

パターンA: すぐに攻めのIT投資へ進む

整備した仕組みがすでに数ヶ月単位で問題なく回っている、あるいは整備の内容が比較的シンプルで運用リスクが低い場合は、間を空けずに攻めの投資へ進んでよい。守りの整備を終えてから半年、1年と待ち続けるのは、機会損失の方が大きくなる。特に競合が先に動いている業界では、待つこと自体がリスクになる。

パターンB: 一定期間の運用実績を見てから進む

整備した仕組みが会社の基幹業務に深く関わっている、あるいは移行作業が大掛かりだった場合は、最低でも1〜3ヶ月程度、実際の業務サイクル(月次締め、繁忙期など)を一度通してから次の投資に進む方が安全だ。整備直後は表面化していない不具合や、現場が慣れていないことによる運用ミスが起きやすい。ここに新しい投資を重ねると、問題が起きたときにどちらが原因か切り分けられなくなる。

どちらのパターンかを判断する材料は、整備した仕組みが「止まったら会社が困る」レベルの基幹業務かどうかだ。周辺業務の効率化であればパターンAに寄せてよいが、受発注や請求など会社の血流にあたる部分であれば、パターンBの慎重さが要る。

それぞれの分岐でやるべきこと

パターンAを選ぶ場合でも、いきなり大規模な投資に踏み出すのではなく、小さく発注して効果を確かめながら進める姿勢は崩さない方がよい。攻めの投資は守りの整備と違って正解が一つではないため、最初の一手が外れる可能性も織り込んでおく必要がある。

パターンBを選ぶ場合は、「様子見」を無期限にしないことが重要だ。期間を決めずに待つと、そのまま攻めの投資自体が先送りになりがちだ。整備完了時点で「◯ヶ月後に次の投資判断をする」と社内カレンダーに明記しておくと、様子見が停滞に変わるのを防げる。この間に、次の投資でどの業務を対象にするか、社内でヒアリングを進めておくと、期間終了と同時に動き出せる。

また、この待機期間中は完全に手を止めるのではなく、生成AIツールの個人利用ルールの整備など、投資額が小さく元に戻しやすい施策から着手しておくのも一つの手だ。攻めのIT投資の助走として機能する。

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守りの整備が終わった直後は、次に何をすべきかが見えやすい一方で、判断を急ぎすぎるリスクもある。整備した仕組みの重みを見極めた上で、間隔そのものを一つの経営判断として意識しておきたい。